名鉄犬山駅の東口。
城下町から線路を挟んだ場所に、地域と福祉が繋がる拠点がある。

「まちの保健室 みそら野」
そこには、学校帰りの子どもたちが集まり、高齢者がコーヒーを飲み、時には心が少し疲れた若者がふらりと立ち寄る。
誰かに用事があるわけではない。けれど、そこに行けば誰かがいて、フッと心がほどける。
ここには、「介護」や「福祉」という言葉だけでは括りきれない、人々の「居場所」があった。

この場所を運営するのは、株式会社 地域福祉推進会・一般社団法人 和顔の輪。
代表の河村政徳さんと、「みそら」を支える長岡美月さんのストーリーを通じて、この地域でつくり上げようとしている「尊厳を大切にし、一人ひとりの想いを叶える福祉」のカタチを紐解きます。
一人ひとりの尊厳を守りたい。その想いから始まった、地域と暮らしをつなぐ歩み

河村さんが福祉の世界に足を踏み入れたのは20代の頃。特別養護老人ホームでの勤務が原点。
そこでの日々は、河村さんにとって「人が人として大切にされるとはどういうことか」を深く考える時間でもあった。
「当時の現場は、効率や管理が優先されるあまり、尊厳やその人らしさが置き去りになっているように感じる場面がありました。どうしても、その空気に馴染めなかったんです」
ある時、河村さんは「特養カット」と呼ばれる光景を目の当たりにする。ケアのしやすさを理由に、女性の襟足を一律に短く刈り上げてしまう。80年、90年とその人らしく生きてきた証である髪型や、大切にしてきた身だしなみが、管理の都合で変えられていく。
「おひな様のような立派な髪型だったおばあちゃんが、入所した途端に、まるで別人のような姿になってしまう。その人が大切にしてきたものが、ケアの名のもとに失われてしまうことに、強い違和感がありました」
人は、最期までその人らしく生きていい。住み慣れた場所で、大切なものを大切にしながら暮らしていい。
その当たり前を支えられる地域の仕組みをつくりたい。
河村さんの中に芽生えたのは、一人ひとりの尊厳を守りたいという、静かで強い情熱だった。

そして、河村さんの根底には、もう一つのストーリーがある。
「特養で働く中で、自分を育ててくれたおばあちゃんをここには絶対に入れたくない、と思ったんです。将来、おばあちゃんが介護が必要になっても、住み慣れた地域で、その人らしく最期まで暮らせる体制を作りたい。それが僕の福祉の原点なんです」
2008年、訪問介護事業から河村さんの挑戦は始まった。
その歩みの根っこにあるのは、制度や事業を広げたいという思いだけではない。
目の前の一人を大切にしたい。
その人の人生を、最後までその人のものとして守りたい。そんな、温かな想いだった。
一人ひとりの「エピソード」を事業にする

「みそら」は、訪問介護から始まり、介護タクシー、訪問美容、食事の宅配、サービス付き共生型住宅、そして就労継続支援B型事業所まで、事業内容は多岐にわたる。
しかし、それらは単に「事業を増やした」結果ではない。一つひとつの事業の背景には、必ず「目の前の人の想いを叶えたい」という切実なエピソードがある。
例えば、みそら食堂の食事宅配。
きっかけは、毎晩のように缶コーヒーと食パンだけで夕食を済ませていた、ひとり暮らしの男性との出会いだった。
奥様を亡くし、気力を失っていたその方に、ただお弁当を届けるのではなく、ちゃんとした陶器の器に入った温かい家庭料理を届けたい。そんな想いが、現在の事業につながっている。
また、ペットと一緒に暮らせること。仏壇も持っていけること。自分の好きなものに囲まれて、これまでの暮らしの延長線上で生活できること。共生型住宅の運営にも、河村さんの想いが込められている。
「コロナ禍で、家族と最期に会えないまま亡くなっていく人たちを何人も見てきました。もし自分が住まいをつくるなら、管理される場所ではなく、好きなものを持ち込み、好きな時に食べ、好きな時に出かけられる、『普通の住まい』でありたいと思いました」

人生の最期まで、その人らしい生活を守り続けることは簡単ではない。
安全。
管理。
制度。
家族の不安。
地域の受け皿。
それでも河村さんは、本人の願いや、その人が大切にしてきた暮らしを、支援する側の都合だけで簡単に諦めさせたくないと考えている。
たとえ周囲から見れば心配に思える選択であっても、本人が「ここで暮らしたい」「この場所で最期まで過ごしたい」と願うなら、その想いを否定するのではなく、どうすれば少しでも安心して叶えられるのかを一緒に考え続ける。
「みそら」が追求している尊厳とは、制度や安全だけで人を見るのではなく、その人の想いに寄り添いながら、現実の中で最善を探し続ける姿勢なのだと感じた。
安心の中で、少しずつ本音がこぼれていく場所

河村さんのビジョンを現場で体現している一人が、作業療法士の長岡美月さん。
長岡さんにとって、「まちの保健室 みそら野」は、誰もが「自分でいられる場所」だ。
「居場所って、自分が自分でいられる場所だと思うんです」
ここに来る人たちは、最初から本音を話せるわけではない。いろいろな経験の中で傷つかないように、自分の気持ちを隠していたり、平気なふりをしていたり、心に鎧をまとっていることもある。だからこそ、長岡さんは無理に聞き出そうとはしない。
何気ない会話を重ねる。
一緒にコーヒーを飲む。
ただ同じ空間にいる。
そんな安心できる関わりの中で、少しずつ本音がこぼれていく。
「ふとした会話の中で出てきた本音を、そのまま受け止められる場所でありたいんです。泣きたい気持ちも、生きることがしんどいという気持ちも、ここでは否定されずに言葉にしていい。そんな安心感を大切にしたいと思っています」
みそら野には、評価されるでも、指導されるでもなく、ただ「自分でいていい」と感じられる空気が流れている。

長岡さんは、かつて自分の祖母を「みそら」のチームで看取った経験がある。
病院では「もう在宅は無理だ」と言われたが、家族と「みそら」のヘルパーや地域の専門職たちがチームとなり、自宅での生活を支え抜いた。
「最期の数ヶ月を家で過ごし、家族全員でやり切ったという感覚がありました。お葬式の時、みんなが『よく頑張ったね』と晴れやかな顔をしていたんです。死に至る経過を一緒に歩むことで、残された家族の絆が深まる。これこそが在宅ケアの、そしてチームで支えることの素晴らしさだと思っています」
人が最期まで自分らしく生きること。家族が後悔ではなく、やり切ったという感覚を持てること。支援する人たちが、その人の人生の一部に静かに寄り添うこと。
それは、特別なことではなく、誰にとっても本当は大切にされるべき日常なのかもしれない。
働く人をプロデュースする

現在、グループ全体で約80名のスタッフが働く。河村さんの経営理念は、徹底した従業員への「信頼」に基づいている。
「うちは子育て中のスタッフも多いですが、BCP(事業継続計画)にも『家族を一番大事にしなさい』と明記しています。災害時や急な熱の時、持ち場を離れてもいい。その穴は他の誰かが必ず埋めるから、安心して帰りなさいと伝えています。自分や家族を大切にできない人に、他人のケアはできないですから」
支える人自身も、自分や家族を大切にしながら、安心して力を発揮できること。その温かさが、結果として地域を支える力になっている。
河村さんは、自分を「経営者」というより「プロデューサー」だと表現する。
面接に来た人が、どうすれば一番輝けるか。
どのポジションなら、その人の個性が生きるか。
どんな関わり方なら、その人の力が発揮されるか。
常に、その人の可能性を見ている。
その象徴的なエピソードが「名刺」。
河村さんは、80名全員の名刺を、自ら名前を打ち込んで発注する。しかも、一度に渡すのはわずか40枚。
「頻繁に『名刺がなくなりました』とスタッフが僕のところに来る。そのたびにフルネームを打ち込みながら、その人の顔や頑張りを思い出す。それが僕にとってのコミュニケーションなんです」
ここにあるのは、厳しく人を動かす組織ではなく、一人ひとりの事情や個性を信じながら、その人が一番輝ける場所を一緒に探していく会社の姿。
4人の子どもを育てる長岡さんも、テレワークなどを活用しながら仕事に向き合っている。
「信頼されているからこそ、裏切りたくない」
そんな言葉の奥には、管理ではなく信頼で人が動く組織の温かさがあった。
「支援される側」から「地域を支える側」へ

「みそら」の活動は、介護の枠を超えて、地域の中で大きな広がりとなっている。2026年にスタートした就労継続支援B型事業所「そらのね」。障がいを持つ方々が、自分らしい個性を最大限に生かし、のびのびと地域で活躍している。
そこにあるのは、ただ作業をする場所ではない。
一人ひとりの得意なこと、好きなこと、安心できる関わり方を大切にしながら、その人が「役割」を持ち、誰かの役に立っていると感じられる場所だ。

そらのねでは、利用者を「スタッフ」と呼ぶ。
それは、言葉だけのことではない。
地域の中で役割を持ち、誰かに喜ばれ、自分の存在が必要とされていることを実感していく。

河村さんはこう話す。
「将来的に5年後、10年後に、うちだけが残っていればいいなんて全く思わないんです。地域の中で、ちゃんとサービスが続いていく仕組みであり続けたい」
そして、こう続ける。
「高齢者にも、障がいのある人にも、自己実現ができるサービスがある。そういう地域になっていくといいなと思いますね」
「支援される側」から「地域を支える側」へ
地域の中に、人が自分らしく生きられる選択肢を増やしていくこと。支えられる人も、支える人も、それぞれの形で地域の一員として輝けること。そのための仕組みを、目の前の一人から丁寧につくり続けている。
あなたという個性を、輝かせる場

最近、入社を決めた20代の女性は、前職の営業で「まちの保健室 みそら野」を訪れた際、B型事業所の活動に惹かれ、「ここで働きたい」と飛び込んできた。その女性は、いま働きながら介護の資格取得を目指している。
この会社では、資格や経験がなくても構わない。
大切なのは、「目の前の一人の想いに寄り添いたい」という願いがあるかどうか。
取材に伺った際、「みそら」で働くスタッフの方々から聞こえてきた言葉がある。
「明日も仕事に行くのが楽しみ」
地域を、自分を、輝かせる。
「みそら」には、介護や福祉という枠を超えて、人が人として大切にされる温かさがある。ここで働くことは、誰かを支えるだけではない。自分自身の可能性や世界が、少しずつ広がっていくことでもある。
あなたという個性を、地域の中で輝かせる。
そんな環境で働いてみるのはどうでしょうか。
株式会社 地域福祉推進会・一般社団法人 和顔の輪
仕事内容
地域の高齢者・障がい者・子ども・若者・家族の暮らしを支える仕事です。
あなたの適性と「これをやってみたい」という想いに合わせたポジションを一緒に考えます。
ともに、はたらきたい人
・目の前の人の「想い」を大切にできる方
・自分や家族を大切にしながら、チームで支え合って働きたい方
・人との関わりを通して、地域や暮らしの可能性を広げていきたい方
・資格や経験だけでなく、人との関わりを大切にしたい方
雇用形態
正社員/常勤パート/登録型パート
募集職種
高齢者福祉事業、障がい者総合事業、地域福祉事業に携わる職種
介護福祉士、初任者研修などの有資格者はもちろん、無資格・未経験の方も歓迎します。
【給与・勤務時間・待遇について】
勤務地や最新の給与条件、福利厚生などの詳細は、
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